玄界灘に面する道(35) ―「阿曇」に由来する地名
『和名抄』などにある「阿曇(あづみ)」に類する地名は、その元締と目される筑前糟屋の「阿曇」から東に進んで行くと次のように並ぶ。筑前国糟屋郡阿曇(あづみ)、怡土(いと)郡海部、那珂(なか)郡海部、豊後国海部(あま)郡、阿波国那珂郡海部、伯耆(ははき)国会見(あうみ)郡安曇(あずま)、近江国伊香郡安曇(あど)、紀伊国海部郡、信濃国阿曇(あづみ)郡、上総国市原郡海部三河国渥美郡渥美(あくみ安久美)、碧海郡蒼海(あおみ)、越前国坂井郡海部、若狭国大飯(おおいい)郡阿遠(あお)、能登国羽咋郡(はくいぐん)大海(おおみ)、越前国蒲原郡青海(あおみ)、因幡国邑美郡邑美(おおみ)。以上の他にも見つけられると思う。因に、青海(あおみ)神社は「六連島(むつれじま)から若狭の青を経由し、越後の西頸城(にしくびき)郡の青海町に進出」(谷川健一氏『日本の地名』、40頁)とある。六連島とは仲哀紀にある関門近くの島であるが、日本海沿岸ルートを通じ越(こし)まで「あお」が延びた。
二つの系列を立て、「あづみ」系は「あずま」、「あくみ」「あど」であり、「あお」系は「おおみ」、「あおみ」を含むと考えよう。「あま」は独立系とする。第一の系は、三音節の「あづみ」が元にあり、「あど」のように二音節に短縮された形がある。第二の系列は、二音節の「あお」から始まり、三音節に長くなると考える。第一の系列については「あど」が元にあるという仮説の余地もあるだろう。しかし、三音節が短くなり「あど」が出たとした方がよさそうだ。この二文字は「あどん」と読むのが漢字音からはストレートであると感じられるからである。「あづみ」を漢字で表音するために「曇」の呉音「ドン」の一部を借用したらしい。この文字の音価はより正確には[dom]であり、全体は、「あどむ」([adom])となるはずである。
ここで、できる限りの派生形を自然に説明可能な音形を原型と考えても、上の「あどむ」(「あづみ」)がそれらしいということが言える。歴史に関わる人びとに「アヅミ」の名についての考えがいくつかある。相見英咲氏と坂本博氏の説を見ておこう。特に、坂本氏は音韻論的な考察も含まれ興味深い。論の核心は「あづみ」は「海住(あまずみ)」に起源をもつのではないという点である。が、氏の説では「あづみ」が何に由来するのか不明であり、結局、海人の部族名ということになりそうだ。
二つの系列を立て、「あづみ」系は「あずま」、「あくみ」「あど」であり、「あお」系は「おおみ」、「あおみ」を含むと考えよう。「あま」は独立系とする。第一の系は、三音節の「あづみ」が元にあり、「あど」のように二音節に短縮された形がある。第二の系列は、二音節の「あお」から始まり、三音節に長くなると考える。第一の系列については「あど」が元にあるという仮説の余地もあるだろう。しかし、三音節が短くなり「あど」が出たとした方がよさそうだ。この二文字は「あどん」と読むのが漢字音からはストレートであると感じられるからである。「あづみ」を漢字で表音するために「曇」の呉音「ドン」の一部を借用したらしい。この文字の音価はより正確には[dom]であり、全体は、「あどむ」([adom])となるはずである。
ここで、できる限りの派生形を自然に説明可能な音形を原型と考えても、上の「あどむ」(「あづみ」)がそれらしいということが言える。歴史に関わる人びとに「アヅミ」の名についての考えがいくつかある。相見英咲氏と坂本博氏の説を見ておこう。特に、坂本氏は音韻論的な考察も含まれ興味深い。論の核心は「あづみ」は「海住(あまずみ)」に起源をもつのではないという点である。が、氏の説では「あづみ」が何に由来するのか不明であり、結局、海人の部族名ということになりそうだ。